■ 教育者の家系 — 女性の道を切り開いた曾祖母

蓮舫 私は、青山学院の幼稚園から大学まで通っていて、当時から品川女子学院を「品女」って呼んでいたんですけど、制服とかイメージとかが、すごく変わったと思っています。おしゃれで、かわいくて、偏差値も上がって、人気が高くて。「品川女子学院の奇跡」とまで言われ、もう色々なところで話されていますが、どうしてこんなに変わったのかと言えば、校長先生の力が非常に大きい。校長先生のご家庭をみると、ひいおじいちゃんからずっと教育者なんですね。

 ここは曾祖母が、女性が建てた学校なんです。

蓮舫 すごい!どういうことなんですか、それは。

 実は、曾祖母の父親が政治家だったんです。当時は、女性に参政権がないような時代でしたが、政治と関わってきていたので、自分が参政権を目指す道に進むか、どうしようかと考えた時に、自分の世代で一人で頑張るよりは、種まきをしていって次世代に託した方がいいんじゃないかということで、女の人の手に職をつけて、いつか政治や経済にも参加できるように、というところから始めたらしいんですね。

蓮舫 大正時代の話ですよね。当時、それこそ女性は、男性の3歩後ろを下がって歩く時代。大正浪漫と言われながらも、やはり男尊女卑が激しい時代でしたよね。

 そうですね。その曾祖母も、無理矢理いとこと結婚させられて、泣いて1週間過ごしたと言っていました。その時は大学に通っていたんですけど、大学も中退しなければいけなくなってしまって。ただ、自分はそういう思いをしたけれど、それを男が悪いとか国が悪いと人のせいにするよりは、なにか自分にできることをしようというタイプだったみたいです。

蓮舫 非常に珍しいというか、自分のことで一杯一杯だと、後進の女性のためにとか、次の世代の未来を作る人たちのために何かをしようというのは難しい時代でしたよね。何かきっかけがあったんですか。

 もともと、実家が寺だったんです。それで、いつも感応奉仕という言葉を使っていまして、ご恩を感じてそれを社会に返すということを言っていたんです。だから当時、その結婚のこととかはあったんですが、それでも大学まで入れたということに、ものすごく感謝して、何か自分がお返ししたいという、そういう気持ちは持っていたみたいです。

蓮舫 それほどの教育者のご家庭ですから、家庭内のしつけも含めて、教育は大変厳しかったんじゃないですか、

 私ですか?そうなんです。両親が教員で長女というと、不幸の始まりという感じで、本当に厳しかったです。下町だったので、みんな学校が終わると遊んで、駄菓子屋さんで買い食いしたりしていたんです。でも、そういうのも私だけ禁止でした。家に帰ると、なぜか近所から通報が入っているんですね。それで、かき氷を初めて立ち食いした日に、やっぱり見つかって、「ちょっとそこに座りなさい。今日、誰と何をしてたか言いなさい」と言われて、「舌を出してみなさい」と。黒くなるじゃないですか、シロップで。その時は「ごめんなさい、もうしません」と謝って、それから、氷はミルクしか食べなくなりました。(笑)

蓮舫 そんな厳しいご家庭で、よく真っ直ぐ育ちましたね。(笑) なぜ、それでも同じ教員の道を選ばれたんですか。

 それが、親に反抗しつつも、食卓で生徒の話がいつも出て・・・教員の家って、学校のことばかり考えてるんです。そういう仕事は尊いなと思い、親には反発するんだけど、教員の仕事には憧れをもつように育っていきました。高校のときに「親の引いたレールの上を」とか、「親と同じ職業なんて」とか言われたので、他の仕事も色々考えたんですけど、なんかワクワクしないんですよ。でも、教員のことを考えると妄想が膨らむというか、「海の引率があるから、救助員の資格も取っておこう」とか、「スキーもあるかも知れないから、スキーもやろう」とか、どんどん広がっていって、やっぱり私はこの仕事がやりたいんだなと思いました。

 

■ 28プロジェクト — 未来から逆算する

蓮舫 確かに、目的があると、足りないものが見えてくるんですよね。すごくよく分かります。私は、別に政治家になろうと思って育ってきたんではないんですけど、まずは大学を出ようと思いました。私立ですから大学までは行けますけど、だいたい22歳ですよね、大学を出ると。そのときには手に職を持っていたいと思ったんです、自立したいと。

 早いですよね、22歳で。

蓮舫 子どもの頃から父に、「5年後を見て育て」って言われていたんです。例えば10歳の時で15歳。小学校5年生のときの15歳って言ったら、もう高校に入る時でしょう。その時を見ろって言われても分からないけれど、でもイメージしろと。そして、高校に入って15歳の時は20歳、成人式の時を考えていました。5年後を考えると、「その時私はこういう女になっていたい」って、足りないものが見えてくるんですよね。だから17歳、高2の時に、「22歳の時には手に職を持っていたい」と思ったので、法学部に行こうと決めました。弁護士になるか、法律事務所だったら、手に職があるので食いっぱぐれない。それに、テストで、自分の力で結果が出ると思っていたし、そういう風にカチカチ考えてきました。そう思うと、品川女子学院では28プロジェクトをおやりになってますよね。ちょっと簡単に教えて頂きたいんですが。

 28プロジェクトは、「女性の一つのターニングポイントは28歳」という考え方で、そこから逆算して、中高の6年間をどう生きるかを考える、未来から逆算したプログラムなんです。なぜ28歳かというと、男の子と女の子の大きな違いは、出産のチャンスがあるかないかだと思うんですけど、そう考えた時に、28歳ぐらいで、そろそろ第一子かなと考える。一方で、仕事がようやく独り立ちできるのが28歳ぐらいで、その2つがぶつかるのが28歳じゃないのかな、と。その時に、先ほど手に職って仰ったけれども、子どもも諦めないで仕事も続けるために、やはり手に職があった方がいい。ということは、その前のターニングポイントが、15、16歳の文理選択の頃、そういう考え方です。

蓮舫 私は、手に職が「口に職」になっちゃったんですけど(笑)、せっかちですから、常に誰よりも早く早くと思っていて、そういう意味では22歳がギリギリだと思っていたんです。(生徒へ向かって)28歳なんて、そんな先を見ちゃいけない、28歳の時は全てを手にしていればいいと思うんです。恋愛も結婚も旦那も子どももペットも家も仕事も、全部。絶対できると思います。それは願えれば絶対に叶う。そして、願ったものを身にするのが教育なんです。その教育が何かと言ったら、いま嫌いな数学かも知れないし国語かも知れないし世界史かも知れないし英語かも知れない。その中で、5年後の自分を見た時、「私は何をしよう」と思ったら、足りない科目が見えてきます。私が高1くらいの時には、これからはアジアだと思っていました。当時、周りの子たちはみんなアメリカに留学するのが当たり前の英語の時代でしたが、みんなが英語をしゃべれたら、それは希少価値がなくなると思って、これからは絶対にアジアで、中国語だと思いました。うちの父が台湾だということもありましたし。それで、ラッキーな事に、自宅の隣が図書館だったので、中国、台湾、香港の本を借りては読んで、足りないものを入れていきました。だから、28プロジェクトはすごいと思ったんです。(生徒と企業のコラボ企画である)飲物にしてみてもキティちゃんにしてみても、考え方が素晴らしい。社会人と全く一緒なので、28歳なんて待っていられないっていう、第1号が出てくれればと思います。

 

■ 未来への投資 — 女性・子育て・教育

 そう、今、中高生で起業するような子を育てたいと思っているんです。これからの日本は、人口減少社会で、どう考えても人が減りますよね。そういう中で国に活力を、と考えた時に、すごい含み資産があると思うんです。これだけ女性が社会に出ていない国も珍しいので、女性で企業っていうことになると、すごくレバレッジが効くんじゃないかと思います。

蓮舫 (生徒へ向かって)専門用語で労働生産人口って、15歳から64歳、いわゆる労働者のカテゴリーの事なんだけど、今これが8000万人いるんですね。その中で、女性だけで見ると、5人に1人は働いていない。それには理由があって、専業主婦だったり、看護だったり育児だったり、あるいは勉強だったり、海外に行ってたり、いろんな理由があるんだけど、男性に比べて、やっぱり女性は働いていない。そう考えると、ここに女性を入れることで、国家にとっても、働く人が増えれば、生産性が上がって経済が活性化します。そして、お給料をもらうでしょう。お給料をもらう人が増えてくれると、その人は自分で物を買います。消費をする人が増える。消費をする人が増えると、企業は売り上げが増えます。売り上げが増えると、企業は利益が増える。利益が労働者に還元されて給料が上がる。給料が上がると、もっと買いたくなる。そうするとお金が世の中を回る。これが、理想的な国の回り方なんです。いま、この消費の部分が動いていない。働ける人が働いていない。これを財産にして、働いてもらおうと、私たちは思っているんです。だから、働いてくれる人を増やすという先生の考え方、ものすごく賛成です。専業主婦が悪いとは言っていませんが、この国は平成9年から、結婚している夫婦のどちらかだけが働いている片働き世帯よりも、共働き世帯の方が多くなりました。いま300万くらい多いのかな。だから、やっぱり手に職というのは、一つの選択肢として考えてもらいたいと、すごく思います。

 一昨年の年末に、サウジアラビアに行ってきたんです。サウジでは女性の地位が低いという先入観があったんですけど、驚いたのは、70年後にオイルが枯渇したときの次の資産は人材だということで、女性の大学進学とか、労働を奨励し出しているんです。もし女の子が留学しようと思うと、付き添い家族の分まで全部、国家が負担してくれるんです。教育費と教育訓練費、職業訓練費をトータルすると、国家予算の25%だと聞きました。日本はOECD諸国の半分くらいで、3.6%とかですよね。だから私は、民主党政権の時に子ども世代への補助を厚くしたことは、政策的にはとても賛成で、票が無いところにお金が回らないのでは、日本には未来がないと思っています。サウジに行った時に、しみじみと感じました。

蓮舫 社会保障、年金、介護、医療といった人生の先輩方のイメージがつくものに、現役世代がずいぶん投資をしてきました。(生徒たちへ向かって)皆さんが働くようになって、もらったお給料から納めた保険料や税金、あるいは消費税から、高齢者世帯を支える社会保障給付金とかを支払うんです、国家は。だけど不平等だったんです。ご高齢者に回る保険料や税金の割合が8割を超えている。それが子どもに向けられている割合は4%もないんです。これは絶対におかしい。払ってくれる次の世代にお金が回らないで、人生の先輩方だけに過度にバランスが傾斜しているのはおかしいとして、私たちの政権の時には、年金、医療、介護といった社会保障に、子育てを加えたんです。これをやるのにも3年かかりました。私たちは次に教育、つまり未来への投資を入れかった。高校教育無償化がバラマキと批判されましたが、私は種まきだと思っています。高校教育を無償化することによって、親の経済事情で学校をやめた子どもたちが復学をするとか、進学を諦めないで済むケースも出ました。だから、ここの理解をもっともっと増やさないといけない。

 日本は義務教育だと言いますけど、国によっては、教育は権利だから、全ての人が親の所得に関係なく、その国の子どもだから教育を受けられるという考え方をする国もあります。所得制限もいいんですけど、それを審査するコストの事を考えると、教育に関しては、親と関係なくみんなでやるという考え方もあると思います。

蓮舫 高校教育無償化は、民主党だけで言っているんじゃなくて、実は日本は、国際条約にサインをしているんです。その中で高校教育を無償化していないのは、マダガスカルと日本だけだったんです。世界のスタンダードに、日本だけがマダガスカルと一緒に遅れているのはおかしい、国際条約を守ろうと考えたんです。まさに今、漆先生が仰った通りです。それと、非常に考えさせられるのは、人口の壁です。残念ながら、どんなに輝ける未来の宝がいても、この国は、皆さま(生徒たち)の世代はどんどん減っていく。人生の先輩方はどんどん増えていく。そして、投票活動があります。20歳になったら皆さんは選挙権をもらえます。でも、若い人たちは投票に行かない。投票に行く世代って60代以上で、その割合は非常に高い。そして、60代以上の世代と、20代、30代を比べると、前者の方が約900万人多いんです。東京の人口が1300万人ですから、それほど多い。この人たちの投票率は6割以上、7割、8割です。ただでさえ人口の少ない20代、30代の投票率は、3割、4割です。そうすると、政治はどちらの声を重んじるか。当然60代以上、つまり、分母が大きいうえに投票に行ってくれる人です。だから、これまでこの国は、教育や少子化や、女性が幸せになるための政策にお金が使われてこなかった。少子化って昨日わかった事じゃなくて、20年前にわかってたことなんです。だから私は、自分が子どもを産んで育てた事もあるんですけど、政治家になった時に「すべては子どもたちのために」というキャッチフレーズで、そこに投資をしたかった。残念ながら下野して頓挫してしまったんですが、先ほどのサウジアラビアの話も、すごく刺激を受けるし、みんなにも知っていてもらいたいし、教育の理念として伝えて頂きたいとすごく思うんですね。

 そうですね。もしかしたらプロパガンダの可能性もあるかも知れないけれど、それでも一つのヒントとして覚えておくべきだなと思います。

 

■ 中高年の女性について — 財産であり、ビジネスチャンス

蓮舫 28プロジェクトで、この中から企業家が生まれればという校長先生の話、ものすごく私が賛同するのは、政治家がよく「いまは女性の時代」だとか「女性を活用する」っていう時の女性のターゲットは、20代とか30代とか、若手なんですね。結婚して、仕事して、子どもも持って、そのために保育所つくって、法律を整備して、仕事を辞めないで済むようにと考えているんだけど、私は、20代や30代は、体力も気力もあるから頑張れると思ってます。実は、この国で本当に頑張らなきゃいけないのは、50代、60代、70代の、働いていない女性です。なぜかというと、働いた事がある人はともかく、全く働かないで60代、70代になって、旦那さんに先立たれたとします。それまで専業主婦で、旦那さんのお給料で暮らしてきたけど、先立たれると、次は年金です。年金で生活するとき、今の政権が言っているように物価が上がったとしても、年金は増えません。貯金がない、または土地、不動産、資産がない、本当に年金だけで暮らすとなって、じゃあ外で働けるかといったら、スキルが何もないんですね。極端な話ですが、いま生活保護を受けている人の半分は、65歳以上の高齢者です。。その中で、60代は男性の単身、一人暮らしが多いんですが、70代、80代は圧倒的に、女性の一人暮らしの方が生活保護を受けている。つまり、保護を受けざるを得ない。(生徒の)皆さんたちには未来がある、元気がある、やる気もある、気力もある、可能性もある。残念ながら、年をとると、それが全部減ってくる。しかも、術がなくなってくる。だから私は、政治家として、今年からやろうとしているのは、50代以上の女性が、働いた事のない人が、専業主婦という選択肢を選んだ人たちが、何かがあった時に自立できるためのトレーニングです。これは大きな政治課題だと思うし、これまで目を向けられてこなかったと思いますが、どうですか。漆校長先生はずっと現場で、最前線で、様々な批判、非難をものともせず頑張っておられるから、もしかしたら違うのかも知れませんけど。

 私は、シニア女性の起業も、一つの可能性じゃないかと思っていまして、女性で働く人が増えてくると、先輩世代がその働く女性に対してサポートできることも増えてくるから、ますます女性が、若い人もシニアも含めて、起業するなり手に職をつけて、もう一度それを社会に還元していくというのは、この国の人口が減っていく中での、本当に大きな可能性じゃないかと感じています。

蓮舫 今までの28プロジェクトの中で、ご高齢者の方々とのコラボレーションなどはありましたか?

 そうですね、卒業生に昭和の話をしてもらうとか、近所に福栄会という特別養護老人ホームがあるんですが、そちらとコラボという形で、子どもたちが伺ったり、向こうから来て頂いたりして、お互いに学ぶ機会があるんです。生徒が向こうに行って、お誕生日の歌を歌って差し上げたら、おじいちゃんおばあちゃんが泣かれて、子どもたちが「自分たちは行っただけなのに、本当にそれでも役に立ったんでしょうか」って言ったりとか。学校という場所をプラットフォームにして、お互いの世代が結ばれていく。そんなことが少しあります。

蓮舫 コミュニケーションですね。参考までに、おじいちゃんおばあちゃんと同居してるっていう子、いますか?(若干名が挙手)やっぱり1割もいないのかな。どうしても都内で住むとなると、家の広さとか間取りの問題もあるんでしょう。でも、コミュニケーションする機会が減っているのも一つなんですが、一方でビジネスチャンスとしてみた方が絶対にいい。日本はものすごい借金大国で、けれど世界から信頼が落ちていないのは、借金をしている以上に資産を持っている国なんです。1000兆円の借金をしているけれども、1500兆円の資産を国民が持っている。その資産とは、不動産、動産。建物とか、土地とか、あるいは貴金属とか絵画とかゴルフ会員権とか貯金とか証券とか株とか。こういうものの時価総額を合わせると1500兆円あります。そして、誰が持っているのかというと、60歳以上が6割以上持っているんです。おじいちゃん、おばあちゃんたちの代がものすごく持っている。60代以上、70代以上の人がものすごいお金を持っていても、今からマンションを買って経営したり、家を買ったりヨットを買ったり別荘を買うかって、買わないんです。せいぜい、豪華客船でクルージングをするとか、考えられる消費は少ないんだけれども、そこを動かすと、国家としてはお金が回るようになるから景気が良くなる。だから、いまご高齢者の消費の市場、例えば塩分を抑えた食事の3食宅配のチラシとか見たことありませんか?ものすごい商機なんです。介護、医療、それと予防。資産を持っている方たちに顧客になってもらうビジネスをするというのは、これはもう当たり前のチャンス。だからやっぱり、視点を変えるような教育ですね。

 そうですね。ツタヤも、大人向けのツタヤを代官山に作りましたが、社長が当初プロジェクトを立ち上げた時は、ずいぶんみんなに反対されたらしいんですけど、やってみたら、本当にターゲットがぴったりで、高齢者だけじゃなくて、色んな世代の人が来るようになったと言っていました。

 

■ 教育改革 — 政治に足りないこと

蓮舫 漆校長先生と話していると、学校教育者の枠を超えているから、本当に大丈夫なのかなと心配なのは、私立の場合には建学の精神で自由な校風があるけれども、義務教育の中学1、2、3年生を預かるということは、どうしても国家の枠として文部科学省の指導の下になる。そうすると、文部科学省や国としては、どこかだけが突出して自由すぎるというのも、これもまた良しとしないんですね。改革をしてくるときに、葛藤があったんじゃないですか?

 そうですね。ただ、工夫ができると思うんです。民間人校長の藤原和博さんは、公立学校の中でも、本当に工夫して100も200も新しいチャレンジが出来ました。私学であれば、保護者の皆さんもここを選んでくれていて理解もあるので、協力も得ながら、思い切ってギリギリの所までチャレンジしていく。それが前例としていいことだとなると、逆に行政も動いてくるんじゃないかと感じています。

蓮舫 政治には、何が足りないですか?

 3つぐらい足りないかなと思ってます。特に人材教育を考えるときは、蓮舫さんも先から考えるってことを仰ってるけど、未来と世界から考えていくべきだと思うんです。これから未来の世界の中で日本がどういう役割を果たすべきか、そのためにはどういう人材が必要かという未来志向で考える必要があって、教育の結果が出るのは10年も20年もかかりますが、その間、決めたことを諦めないでやっていく。だからビジョンと責任者が必要です。あとは、それが正しいかどうかの現状把握です。それには現場をよく知っていることと、指標が必要だと思っています。前、ゆとり教育をやってやめたときも、PISAの成績が落ちたとか、いろんな事が原因と言われたんですが、あれは他人の指標ですよね。何かやるときに、途中で効果検証する指標は自分の中に持たなければいけないと思います。また、今もいろんな政策が降りてきますけど、現場を知っていればもっと優先順位が明らかになります。例えば小学校、中学校を変えるより、私だったら、大学の入試制度を変えると思います。そうすると、下は上を見てますから、自動的に下は変わると思うんです。そういった現場感覚も必要じゃないかなと思っています。

蓮舫 なるほど。どうしても、決められてきて、守られてきて、続けられてきたものを変えるというのは、ものすごく力が必要なのと、ものすごい抵抗と戦わなければいけなくて・・・

 ああ、仕分けの時ですね。(笑)

蓮舫 ええ、行政改革は抵抗しかありませんから。(笑) だってヒト、モノ、カネが黙っていたら降りてきたのに、それを剥ぐ作業ですから。それによって仕事がなくなる人たちがいる。でもその仕事は税金で成り立っているって事を忘れている人たちもいたわけですから、私は、あの時の事は後悔していないし、今も同じことをやっています、野党でも与党でも。だから、ブレずに突き進むっていうことは大切なんですが、人材を育成するのも、国として改革をするのも、結果には時間がかかるので、途中で諦めない力は大事だと思います。

 本当にそう思います。諦めないで、やり続ける。あと、失敗したら逃げ足を速くというのも大事で、すぐ撤退して謝って、また次の方法を考える。失敗はチャレンジの結果なので、子どもたちには「失敗とモメ事を大事にして」と言っているんです。

 

■ 女子生徒に伝えたいこと — 時間を無駄にしない

蓮舫 今日いただいた様々な課題を、私なりにもう一回考えて、国会の場でも、質問や政策提言に使わせて頂きたいと思います。ところで、漆校長先生に会って、すごく時間の使い方が上手だと思いました。1日24時間、みんな平等にありますが、その1分1秒の使い方が上手かどうかは、ものすごく左右をします。ちゃんと寝てますか?

 じゅうぶん寝てます。8時間ぐらい。(笑)

蓮舫 すごいですね。じゃあ、起きてる時間が濃厚なんですね。どういう整理軸でやってるんですか?

 時間の使い方が上手いんじゃなくて、見かけによらずしっかりしていないので、周りの人がしっかりしてくるんですよ。それで、周りの人がやってくれるので、やってるように見えて、実はほとんど丸投げしてる事が多いんですね。(笑) それと、割と生徒がしっかりしているので、いろいろやってくれています。

蓮舫 私は、時間もそうなんですけど、すごく生き急いで、人より早く大人になりたかったし、人より早く色んなものを手にしたくて、中学の時も、小学校の時もそうなんですけど、けっこう女子って群れるじゃないですか。(生徒へ向かって)女子校ってどうなんだろう。なんか、ぺたぺたした感じ?なんでトイレに一人で行けないんだろうとか、なんでお家に帰る時に、一緒に寄り道しなきゃいけないんだろうとか、なんでお金もないしお腹も空いていないのに一緒にコンビニ行かなきゃいけないのとか、くだらない会話でファミレに行かなきゃいけないのかっていうのを、私は子どものときにすごくおかしいと思って、絶対に付き合わなかったの。「お金が無い、行く意味が分からない、今日は帰る。」これは嫌われるよね。だけど、それでも私は、スポーツで必ず一番になろうって努力をしたり、この教科では絶対に1位になろうとか努力をしていた。何かに秀でたら絶対に批判はされない、こう自分で信じていたしね。いまの皆さんが生きている学校の中の社会という環境と、私が生きてきた環境は違うかもしれないけど、群れたり、人に付き合って自分に疑問を思っている時間って、本当に無駄だから。もったいない。っていうのを、今日は絶対に言いたかったんですが、どうですか。

 人にどう思われるかって、私もすごい気になるんですけど、蓮舫さんが私と違うのは、どう思われるかって事を克服してることと、私はチャンサイが好きで、蓮舫さんは嫌いってところかなと思っているんです。(笑)

蓮舫 チャンサイの匂いがね。(笑) そうなんです、だから、やっぱり色んな生き方があっていいと思うんですけど、時間は等しくあるけれども、その中身を濃厚にするかどうかは生き方なので、すごく漆校長先生は上手ですね、まさか人に全部押し付けてるとは思いませんけど。(笑) でも、それを教育で伝えるのって、なかなか難しいですよね。

 そうですね。あと私が聞きたかったのは、決断力をどうやって身につけているのか、何を基準に決断なさっているのかなと。中国へ留学なさったときも、キャスターで全盛の時に辞められてますし、たぶん仕事とお子さん、出産とかも、いろいろお考えになったと思うんですよね。お子さんを育てる時もお仕事を休んでらっしゃいますよね。ああいうところの決断というのは、どういう軸でしているのかなと思って。

蓮舫 5年後です。ニュースキャスターをやっていたときは仕事もあったし、収入も信じられないぐらい安定していたんですけども、いつまで続くか分からないでしょう、テレビの番組なんて。スポンサーがいつ降りるか、新しいアナウンサーがいつ入ってくるか、自分の人気がいつなくなるか。そしたら、いい時に辞めちゃって、5年後を考えた方が絶対にいいと思ったし、子どもを産んで育休をしても、この子たちが5年後に5歳になった時には、もう幼稚園か保育園に入ってるし、必ずそのとき私は復帰できるって自信もありましたから。どんな判断をするときでも、5年後を考えてどっちがプラスかマイナスかですよね。

 今のことだけじゃないわけですね。先から逆算して考えると。

蓮舫 逆算です、常に。でも中々できないって言われますけどね、その判断は。

 そう、近くのことの方が大きく見えるんですよね。それもあるのかなって。

蓮舫 ああ、確かに。(生徒へ向かって)目の前にケーキがあって、いまそれを食べると絶対に太るって分かってるのに食べるでしょ。決断を考えた時には、いまダイエットしてるなら食べちゃダメなんだっていう判断ですよね。

 とりあえず先送りしておくとかね。

蓮舫 そうそう、「まあいいや、別腹」って。別腹はないから、世の中には。

 あと、うちの子たちは女子校で、私も女子校勤めしかしたことないので、日本の社会って、この本(『一番じゃなきゃダメですか?』蓮舫著)にもありましたけれど、「女のくせに」っていう所との戦いだということを伺って、その辺は、どういう状況なんですか。

蓮舫 (生徒へ向かって)あのね、漢字ってよく出来ていて、女偏に良しって書くと「娘」。良い子は娘なんですよ。それで、女偏に家って書くと「嫁」。家にいくから。そして、女が古いと「姑」でしょ。女の生き方って漢字で分かるように、良い子で育てて嫁に行かせて姑にさせる、もう冗談じゃないって話ですよね。男偏の漢字なんてないですから。古い考えも伝統で大事ですけど、今の時代に合った女子の生き方も、私はとても大事だって思っています。私はずっと共学だったし、兄と弟がいて、双子も娘と息子ですから、常に男子を見ているけれども、女子の方が、精神年齢的にも5歳は絶対上です。本当に男の子って幼稚だから。これは本当にあらためて思います。だから、そういう特質を生かして、どんどん先を歩いてもらいたいと思います。でも、漆校長先生には弟さんが2人いらっしゃいますよね。

 そうなんです。うちは割と弟の方が精神的に大人なので、ほとんど弟に頼って、実印も預けてるので・・・「僕が悪い子だったらどうするの」って言われてるんですけど、「そしたら諦めるからいいわよ」って、言ってます。(笑)

蓮舫 本当ですか、大丈夫なんですか。(笑) 素晴らしい、信用する力ですね。ぜひそれも学ばせて頂きます。