責任の重さ

昨年成立した年金時効特例法。法改正以前は、社会保険庁の間違いによって年金記録に問題があったことが判明しても、5年の時効規定があったことから、5年より前にもらえるべき年金を受け取ることが出来なかったのですが、法改正によって、記録が訂正されれば訂正分の未支給年金は時効期限にかかわらず給付されることになりました。(実は、5,000万件の行方不明になっている年金記録は時効の要件を満たしているとは言えず、法の運用を厳格に行うことで社保庁に瑕疵があれば貰い損ねている年金を全て弁済してもらうことが可能で、法改正がなくても救済が可能だったと私たちは考えていました。しかし、昨年の通常国会閉会直前、与党は、実に様々な法案審議を短時間で打ち切って強行採決を繰り返し『改革姿勢』をアピール、この特例法もその中の1つで、審議時間はわずか4時間でした)

問題は、昨年夏以降から今年の3月31日までに自身の年金記録が訂正され、時効以前の給付金を支給された件数がすでに28,334件あり、支給が決定された総額が213億円になるということです。これまで、保険料を納めながら、しかも自身の瑕疵がない記録問題によって、年金が満額支給されない事例が実に多いことの現れだと思えますが、同時に驚く事は、1,000万円以上の給付を受けた方がすでに80人以上いらっしゃるということです。最高額の支給決定は2,823万円で、96才の男性は30年間も年金が未払いになっていました。他にも99才で1,655万円支給、97才で1,487万円支給というケースもめずらしくありません。30年間もずっと年金がもらえなかったというのはどうしてなんでしょうか。高齢になってようやく未払い分を受け取ったとしても、身体の自由等はどうなるのでしょうか。もっと前に受け取っていたら使いたかったことがあったのではないでしょうか。その意味で年金が戻ってきても、失われた時間は戻らなく、社保庁の責任は本当に極めて重いと思います。

今日、厚生労働委員会で、こうした問題を質問しました。社保庁長官も、この指摘に対し「責任の重さを感じて」おられると答弁されました。ところが、組織として本当に責任を感じて記録問題の解決に尽力しているのかどうか疑問が残るのは、06年8月から07年8月までの1年間に、社保庁の課長・企画官相当職以上で退職し、社保庁関連の公益法人・団体に天下った職員が16人おられることからです。16人のうち4人は年金記録問題の処理にあたっている現場の責任者です。「様々な事情がある」と、社保庁長官は答弁しましたが、どんな事情があろうと、社保庁の責任によって5,000万件もの記録問題が発生したにもかかわらず、その問題解決へ善処することのないまま天下りが横行することは決して理解できないと思います。
そして、この組織が2年後に民営化されることに対して、改めて反対だと強く感じています。

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