昨日、与党は衆議院本会議で『内閣信任決議』を、与党の賛成多数で可決しました。これによって、政府の中からは一昨日の参議院本会議で可決された福田首相への『問責決議』が粉砕された、と公言する方もいます。
「法案が全く通らないのは(本当はたくさん成立していますが)ねじれ国会が悪い。参議院の第一会派である民主党が悪い」と、与党からよく批判をいただきますが、『内閣不信任案』さえ出ていない衆議院で唐突に内閣信任案を提出することこそ、衆参の数のねじれを利用した姑息な手段であって、参議院で決定した意思に衆議院が応えたから『問責決議』は関係ない、という姿勢は理解に苦しみます。
同じく昨日、政府・与党は後期高齢者医療制度の改善策を決定しました。今日13日に行われる、2度目の年金からの後期高齢者医療保険料の天引き前に軽減策公表を間に合わせたいとする意図が見て取れますが、その中身は保険料の負担軽減の拡大と年金からの天引きの見直しです。具体的には年金収入が年168万円以下の方は10月から半年間、保険料の徴収を凍結することで、定額部分の保険料である均等割額が8割5分に減額となるというのですが、これはあくまで『凍結策』であって、実際に全額負担をしていただくのを先送りしただけにすぎず、理念なき軽減策としか見えません。また、年金からの天引きを見直すというのは、年金収入が180万円未満の方は、本人ではなく世帯主や配偶者の口座から保険料を引き落とせるようにするというものですが、後期高齢者医療制度が始まったことで、お子さんなどの被扶養者だったご両親は被扶養者から外れ、新たな後期高齢者医療保険料を自身の年金から天引きされることになりました。これによって、誰が保険料を負担しようと世帯主の保険料控除は減らされることになるので、結果、所得税と住民税が増税になることになったのですが、今回の政府による軽減策ではこの問題に全く触れられていません。
法律が施行される前に、昨年度の補正予算から1,800億円が保険料軽減策に使われています。今回の政府の新たな軽減策には560億円が必要と試算されていますが、財源には言及されていません。財源を語らずに補正予算に頼る政策に安定度があるのかどうかは大きな疑問です。
さらに言えば、政府・与党案によって保険料が安くなる世帯が69%から75%に増えると主張をしています。しかし、例えば東京では低所得の方で保険料が安くなる割合は69%、高所得の方で保険料が安くなる割合が85%と、所得が高いほど軽減効果があり、所得が低いほうが保険料負担が増える傾向は解決されません。
昨年度の補正予算と新たな政府案で必要となる額をあわせると2,360億円です。これだけの財源があれば、後期高齢者医療制度を廃止し、国保に戻したとしても、国保の地域間格差を解消することができました。私たちはこの制度は問題が多すぎるとして、法が施行される以前に廃止法案を国会に提出していましたが、与党は審議にさえ応じてくれませんでした。6月5日に参議院から衆議院に送付された新たな廃止法案も、与党は無視し続ける一方で、軽減策を与党内でまとめました。与党にとっての国会とは一体どういうものなのでしょうか。