日台関係

6月10日未明、領海警備を行っていた海上保安庁の巡視船が尖閣諸島領海内に航行中の船影を発見。
午前3時23分、巡視船が暗夜の中、航行中の船名を確認のため接近したところ、同船と衝突。(船名は台湾遊漁船「聯合号」と確認)
午前4時38分、聯合号が領海内で沈没。
聯合号の乗組員3名、乗客13名を巡視船が救助し、船長に軽傷が認められたため全員を石垣島に搬送。
医師による診断を行い、船長及び乗客1名の軽傷以外は異常なしとの診断。
乗客は事情聴取を受けた後、10日午後8時10分、公海上で台湾巡視船に引き渡し。
機関長、機関員は、事情聴取の後、12日に飛行機で帰台。
船長は13日に事情聴取を終え飛行機で帰台。
海上保安庁は、この事件においては、日本の巡視船船長を業務上過失往来危険罪ならびに業務上過失傷害罪で、聯合号船長に関しては、取り調べ以外は制約のない任意の事情聴取を行い業務上過失往来危険罪で那覇地方検察庁石垣支部に書類を送致しました。
海上保安庁の話を聞くと、この一件は海上事故として合法的な処理が行われたと思われますが、事故発生から5日後に、台湾のメディア関係者や活動家等を乗せた抗議船が台湾巡防署巡視船と共に尖閣諸島の日本の領海内に入域し、海洋法条約に基づいて海上保安庁より退去警告等が実施されるなど、台湾におけるこの問題は事故そのものではなく、領海問題となっています。日本と台湾の間には漁業協定がないことから、尖閣諸島近海では漁業における摩擦が少なからず起きてきましたが、これまでは、こうした摩擦が政治問題化することは極めて稀なケースだったと思います。ところが、今回は政府内や与党から対日強硬論の発言が相次ぐと同時に、台湾へ召還された駐日代表が国民党の国会議員に「売国奴」などと罵倒されたことなどに抗議して辞任を表明するなど、日台関係の悪化につながりかねない事態となっています。
尖閣諸島の領海問題は、台湾だけではなく中国もその主権を主張し、日台中間で政治問題化されているだけに、今回の事態は一過性のもので終わるとは思えず、慎重に外交関係を展開していく必要を強く感じると同時に、日台関係における外交的信頼が本当に築かれてきたかどうなのか、「親日だから」というような感情論でごまかされてこなかったかどうかを今一度点検すると共に、アジアにおける日本の立ち位置を今一度確認するべき機会にしたいと思います。

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