妊娠・出産、産前産後休業や育児休業を理由に、解雇などの不利益取扱いをすることは育児休業法で禁止されています。ところが、経済状況の急速な悪化に伴ったリストラの中で、育児休業等が理由と見られる解雇相談が増加しています。現行法では、こうした不利益な取扱いを受けた場合には各都道府県の労働局に相談をしていただき、紛争を解決するために労働局の判断で事業所への指導、助言、勧告が行われることになっていますが、法そのものに罰則規定がないこと、また、就労継続を希望する会社ともめたくないこと、小さなお子さんを抱えて紛争まで行うことにとまどいがあることなどから、相談件数以上に泣き寝入りをせざるを得ない方も多くおられるのではないかと思えます。
昨日、党の会議に二人の女性にお越しいただき話を伺いました。
一人は、10年勤務した会社で産休育休を取得し、今年1月末から復職する予定でいたものが、社長と面談をしたところ、「夜、接待に出られるか?」、「歩合制にするか?」という理不尽な提案をされた上、「辞めるか?」と言われ、退職に追い込まれたといいます。しかも、会社から送られてきた離職票の退職理由には『育児による負担』と書かれていたといいます。
もうお一人は、育休を取得し今年4月に復職する予定が、突然会社からメールが送られてきたといいます。「業績不振で仕事がない。復職を延期してほしい。期日は言えない」と。
前者は解雇を強要していることから、育児介護休業法違反と思われます。後者は会社側が勝手に育休を延長し、会社の都合で自宅待機を命じていることから労働基準法違反が疑われます。
お二人とも、「ことを荒立てると復職しにくい」、「業績が上向いたら復職させてほしいという思いがあったので騒ぎ立てなかった」と言われます。
働きたい、好きな仕事を続けたい、という思いを、出産、育児のために断たれることが、どれだけ彼女達のプライドを傷つけているでしょうか。景況悪化を理由に、罰則がないことを活用するかのように、子育てをする女性からリストラを進めていく企業を増やさない、減らす、なくすことが早急に求められます。
今朝、財務省など関係省庁から政府が提出した平成21年度補正予算案の概要について説明を受けました。『緊急雇用対策』には、内定取消問題への対応、短時間勤務を希望する者への支援の充実、ハローワークの相談支援体制の強化などのメニューが並びますが、育児等を理由に不利益な取扱いを受けた女性支援の項目はありません。政府にとって、この問題は内定切り、派遣切りなどと並ぶ緊急雇用対策ではないとの認識なのかと疑ってしまいます。また、『子育て支援』を見ると、3才から5才までのお子さんに月3,000円を1年だけ支給するバラまき政策はありますが、育児と仕事を両立させたい方々を支援する政策は見当たりません。あわせて政府は、国会に育児介護休業法改正案を提出しています。この法案に、子育て期間中の働き方の見直しや、父親も子育てができる働き方の実現策など、これまで民主党が主張してきた内容が盛り込まれていることは評価できます。ただし、育休切り対策としては、苦情処理や紛争解決の援助及び助言の仕組みを創設することと、企業が労働局の勧告に従わない場合に公表する制度を設けていますが、育児等を理由に解雇されないための予防策が講じられていないことは問題だと思います。党として政府案に修正を申し入れていきたいと考えています。
実際に、ご自身の辛い体験をお話ししてくださった女性が言われていました。「子どもがいても働き続けられる当たり前の社会をつくりたい」、「未来を担う子どもたちを社会全体で育てていこうという機運が高まり、少しでも不安のない状況にしてほしい」。
仕事か、育児か。そんな切ない選択を強いる社会を変えたいとの思いを新たにしています。