蓮舫代表は1日、「FOR NEXT」キャンペーンの一環として、さいたま市内で開かれた「LGBTについての意見交換」等に参加。女性から男性に戸籍を変えたFTM(Female to Male)のトランスジェンダーで、3月12日に行われた埼玉県入間市議選で当選した細田智也さんら当事者と性自認・性的指向で差別されない社会のあり方について議論した。武正公一衆院議員、大野元裕参院議員、杉村慎治党第9区総支部長らも参加した。
LGBT差別解消に向けた意見交換
日本初(おそらく世界でも初)のFTMトランスジェンダー議員だという細田議員は、LGBTである自身の体験を振り返って「小さい頃から性別に悩み苦しみ、親にも誰にも相談できず、どこに行けばよいかも分からなかった。20歳の頃に素敵な笑顔のFTMの人と出会い、あの人のように『性別を変えて生きていけるんだ』という一心から大変な手術を受けた。それでも何で私だけ健康な身体にメスを入れなければいけないのかと悩んだが、性別欄を変えるにはそうせざるを得なかった」と告白。今後は入間市議として「一人ひとりの多様な考え方や価値観を尊重できる日本を目指したい」と抱負を語った。
他の参加者から「FTMの弟は教員をしていたが、学校側から辞めるよう言われ、2年前に退職した。今はLGBT条例制定に向けて活動している」「小学生から高校生の頃が一番苦しく、中学生の頃には自殺を一度考えた。それは結婚できず、子どもを産めず、将来を想像できなかったからだ。そうした時期にいろいろなサポート体制があれば苦しみが少なくなる」「学校の先生にLGBTの理解を深めてもらいたい。正しい知識を教育できる場と相談できる場所が重要だ」「個人レベルで知識は深められるが、結婚や手術の場面等、(LGBTの人向けの)制度面が整っていないことが不安だ」等の意見が出た。
蓮舫代表は「1人ひとりが違っていいことが当たり前の社会にしたい。LGBTという言葉だけが1人歩きするとか、その言葉だけが流行になるとかではなくて、異質なことではないと皆が受け止めて一緒に生きていける空気をどう作っていくのか」が課題だと述べた。今回の企画で中心的役割を果たした井上将勝埼玉県議は「LGBTの方々は、人間として立派に生きているのに何でこんなに迫害されなければならないのか。マイノリティーの方々の声を拾い上げて伝えていくのは絶対の正義だと思う。われわれの党としてしっかり取り組んでいく」と差別解消への決意を語った。
貧困の若者支援に関する意見交換
貧困の若者支援に関する意見交換会では、さいたま市にあるNPO法人「さいたまユースサポートネット」代表で、昨年発足した「全国子ども貧困・教育支援団体協議会」の代表も務める青砥恭さんらから「困難を抱えた子どもの支援のあり方」について説明を受けた。同ネットは、高校を中退、通信制高校生、不登校や引きこもりを経験、障害で行きづらさを感じている子ども・若者など、この社会に居場所がなかなか見つからない子ども・若者を無償で応援するNPO。三神尊志さいたま市議からは党埼玉県連の若者・子ども支援の取り組みについて聞いた。
子どもや若者のための居場所や学習支援、学び直しがなぜ必要なのかについて青砥代表は、東松山市で発生した若者に関わる深刻な事件を例にとって話した。「5人の少年が仲間の少年を河川敷で殺害した。3人が不登校の中学生、2人が高校中退者。学校に居場所がない子どもたちがつくった暴走族グループから抜け出そうとして殺されてしまった。その犯罪を犯す側には居場所を選べない孤独と絶望感があった」「家族が貧困で力がない時は学校が守らなければならないが、その学校がなければ今の10代の若者にはセーフティネットがない。競争から外れてしまった子どもたちをどう支援していくのかの研究から、居場所や学習支援を行うようになった」等と説明した。
ぶらさがり記者会見
意見交換ののち、記者団の取材に応じた。今回の2つの意見交換会の印象について問われた蓮舫代表は、「LGBTと子どもの貧困の現場で活躍している皆さんの声を聞いた。それぞれ重い声で、政治が動かないと、頑張っている人たちの思いと努力だけではなかなか前に進まない」と指摘。LGBT差別解消に向けて野党4党で国会に提出した法案の成立に尽力していくと語った。子どもの貧困問題については「今の政権の見ている方向と私たちが行おうとしている方向が随分違うことが分かった。予算の使われ方の精査、再分配のあり方、どういう提案ができるのか考えたい」と述べた。
自民党が認めていない同性婚についての考えを問われ「性同一性障害の方たちが結婚に対して自分の性がどうなのかという悩みを持っているという現実を自民党議員も分かっていると思う。LGBTの人にとって異性との結婚はハードルが高い。他方、人口が減少していき、結婚する人も減ってきている。どういう新しい家族のあり方があるのか。多様な生き方をどのように支援していくのか。渋谷区のようにパートナーの証明書を出すという行政も出てきたので、時代に応じて変わっていく家族観、結婚観がある」と述べた。