今朝、党の厚生労働部門会議で財政制度等審議会に財務省が提示した「介護給付見直しの影響額試算」について、財務省から説明を受けました。
財務省が、5月13日に介護保険給付費抑制に向け発表した3つの試算は以下のものでした。
㈰ 軽度の要介護者を「制度の給付対象外」にすると、給付費は2兆900億円の圧縮になり、国庫負担は6,100億円減額になる
㈪ 軽度の要介護者の家事支援など「生活援助」をなくすと、給付費は1,100億円の圧縮となり、国庫負担は300億円減額となる
㈫ 軽度の要介護者の「自己負担額を1割から2割に引き上げる」と、給付費は2,300億円圧縮され、国庫負担は700億円減額になる
財務省の説明によれば、財政制度審議会で稲城市長から「軽度者を介護保険制度から外すこともありえるか」との提案があったことやドイツにおける介護保険制度では対象者を重度者に特化していることから、この試算を行ったと言いますが、財務省の試算は端的に言えば「軽度の介護者を国の保障する介護制度の対象外にしよう」というものです。この点について財務省の担当者は言いました。
「制度の対象外になった部分は全額自己負担、あとは地方のボランタリーな取組で対応したり、様々な方策が考えられます」
財務省は財政削減しか考えていないことを如実に表した発言でしたが、介護制度は本来要介護度の重度化を防ぐことで元気な高齢者を支え、家族だけではなく社会で介護を支えるという精神にたって創設されたものです。それが、国の負担が増える度ごとに介護報酬の見直し等が行われ、給付抑制策が取られてきました。今度は、軽度者は制度の対象外でサービスを受けられなくするという提案が財務省から出てきました。財政削減を行い続けることで介護保険制度が維持できるのでしょうか、また、国民にその負担が本当に受け入れられるものでしょうか。
介護保険制度が始まった2000年に3.6兆円だった介護給付費はその後右肩上がりで伸び、2007年には6.9兆円となりました。その給付費は国と地方で50%、40才から64才の保険料で31%、65才以上の保険料で19%をまかない、費用が増えれば保険料が上がっていく仕組みとなっていて、制度発足時の65才以上の全国平均保険料は2,911円だったものが、2006年には4,090円となってきています。財務省の提案は、この保険料負担に更なる自己負担増、あるいは全額自己負担にしていこうというもので、到底理解できるものではありません。
小泉首相の時に「骨太の方針」で、2011年にプライマリーバランスを0にするという政府方針がまとめられました。その方針に添った計画を達成するために財務省は仕事をしているのだと思います。確かに借金に頼らず、その年の収入に見合った支出を行っていくことは健全な国家財政運営のあり方ですが、借金を返す負担を75才以上の高齢者に焦点を充てた後期高齢者医療制度を作って医療費削減につなげていくことや、介護保険のサービス対象から軽度者を外していくといった方法は、福祉政策として間違っていると思えると同時に、こうした政策を、国民の声を聞かずに決めていくという政府の手法にも大きな疑問が残ります。医療、介護、年金という社会保障制度を争点とした総選挙が一日も早く行われるべきではないでしょうか。
600兆円もの国の借金を作ってきたことへの謝罪、総括もなく、誰の責任も問うことなく、国の借金返済のために社会保障費を毎年2200億円削り、負担、しわ寄せを高齢者、国民に押し付けるあり方が問われる選挙にするべきだとも思います。その際には、財源、提案も含め、私たちのマニュフェストも総点検が必要になると思います。
今日、岡田克也元代表の著書「政権交代〜この国を変える〜」が発売されました。また、今月号のVOICEに前原誠司前代表の「民主党は政権を担えるか」が寄稿されています。お二人の提言には、民主党内の主張、議論、提言などが詳細にうたわれています。どうぞ、一度お目通しをいただければと思います。