蓮舫代表は28日、参院本会議で安倍総理の所信表明演説に対する代表質問に立ち、(1)経済政策(2)補正予算(3)社会保障政策(4)築地市場の移転問題(5)輸入米の価格偽装――等について質問。アベノミクスからの転換を迫り、教育や子育て支援、職業訓練などの若手・現役世代への再分配、社会保障の充実、『人への投資』を重点的に強化することこそが経済再生につながる王道だと訴えた。
冒頭、台風や各地での記録的な豪雨により亡くなられた方々、ご遺族に対し哀悼の意を表するとともに、被害に遭われた方々へのお見舞いを表明。政府に対し被災者への生活再建や農作物被害への対策等、地元自治体、地域住民に寄り添った十分な対策を講じるよう要請するとともに民進党としても最大限強力すると述べた。
そのうえで、自身の名前に込められた、泥の中から凛と茎を伸ばし花を咲かせる「蓮」になぞらえ、前途多難な道のりのなか「選択される政党になるために、先頭に立つ覚悟で国会論戦、政治活動に臨んでいく」と新代表としての決意を表明。巨大与党に対し、「政治が間違った方向に進もうとしている時には堂々と異を唱え、国民の不安を解消するため、提案をもって民主主義を守る役割を果たすべく、政府の姿勢に真正面から論戦に挑み、巨大与党が切り捨てている国民の声、その思いを堂々と訴えていく」と力を込めた。
アベノミクスをめぐっては、2012年12月に安倍内閣が発足して約4年が経つなか、安倍総理が目指していたデフレ脱却も経済の好循環もまだ実現していないと指摘。金融政策の限界が露呈していることや、大規模な財政出動を続けても足元の経済状況への不安は拭えず消費税増税を先送りせざるを得ない状況にあること、日本経済の潜在成長率は0.3%との試算があることなどを挙げ、「今や本当に必要なのはアベノミクスそのものの検証ではないか。成長につながらない経済政策を大胆に転換すべきだ」と迫った。
異次元の金融緩和、大胆な財政出動を繰り返しても経済成長しないのは、トリクルダウンが機能し、高度経済成長を遂げた時代と違い、今の日本は人口減少社会になったことであり、過去に通用した経済政策ではなく今の時代にあった経済政策が必要だと提案。今や働く人の4割が非正規など不安定雇用であることにも触れ、「消費が拡大しないのは、全てのライフステージでお金を貯めておかなければと思う『不安』があるからだ。1年後、数年後の自分の人生設計すら描けないためにお金を使えない不安。結婚できるかという不安。子どもを産んでも育てられるかという経済不安。大学を奨学金に頼ったものの非正規社員にしかなれずに借金を返せないという不安。現役を引退、年金・介護・医療制度で生きていけるかどうかの不安。この不安の連鎖を断ち切る。アベノミクスでは解消されていない教育、雇用、老後の不安を取り除いてはじめて、個人消費が動きだすと私たちは考える。だからこそ、教育や子育て支援、職業訓練などの若手・現役世代への再分配、社会保障の充実を通じたシニア世代への再分配、『人への投資』を重点的に強化することこそが経済再生につながる王道だ」と訴えた。
これに対して安倍総理は、「3本の矢の政策を進めることにより、経済の好循環は着実に回り始め、現在ではデフレではないという状況を作り出すことができた」と強弁。「アベノミクスは道半ばだ」と消費増税を先送りせざるを得ない状況に至ったことにも、参院選挙で与党が改選議席の過半数を上回る議席を獲得したことを理由に、「国民の信を問い、国民の信を得た。ごまかしとの指摘は当たらない。安倍内閣としての責任は、アベノミクスをいっそう加速させていくことだ」と開き直った。
蓮舫代表は、補正予算については大型公共事業が目立つとして、今わが国で最も優先順位の高い公共事業は高度成長期に作ったインフラの老朽化対処だと主張。新幹線、港湾といった新規のインフラ整備に必要な巨額のカネを借金に頼るより、新規建設をなるべく抑え、既存施設の維持・修繕・長寿命化に重点を移すことこそ、国民生活に役立つと述べた。
また、「アベノミクスの果実を活かし、優先順位をつけながら社会保障を充実していく」と安倍総理は発言しているものの、果実の予算規模や優先順位が分からないと指摘。2014年10月に安倍内閣が年金積立金GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の株式運用比率を倍増させた影響で、昨年度から今年6月までの15カ月で約10兆円の運用損が出ていることや、GPIFと日銀が巨額な公的資金を市場に投じ、市場を歪めていることを問題視し、「最優先で手をつけるべきは年金積立金の運用改善だ。国民の不安をあおるかのような年金積立金の運用は止め、リスクが低く市場を歪めない運用に戻すべきだと提案する」と迫った。
6人に1人が相対的貧困状態にあるという子どもの貧困問題や単身の65歳以上の男性の30%、女性の45%が貧困状態であることにも言及。国による子どもの貧困支援、年金の最低保障機能の強化を求めた。社保税一体改革の法改正で、消費税10%への引き上げに応じた社会保障の充実策として低年金受給者約790万人に最高年額6万円の追加的給付を行うことを決めたにもかかわらず、最初の消費税増税先送りによって追加的給付の措置は既に1年半先送りとなっていることから、「今回の2回目の先送りをそのまま反映させれば、追加的給付は都合4年間も先送りとなりかねない。政府の財政運営の失敗で、年金受給者にこうした負担を強いることは適当ではない。政府が一丸となって財源確保に全力を挙げ、来年4月からの追加的給付を実施すべきだ」と求めた。
これに対して安倍総理は、「給付とバランスを考えれば消費税率の引き上げを延期する以上、すべてを行うことはできない。私たちは赤字国債を財源に社会保障の充実を行うような無責任なことは行わない。そのなかで可能な限り社会保障を充実させていけるよう優先順位をつけながら税収の動向や重点化、効率化の効果を見極めつつ今後の予算編成過程のなかで最大限努力していく」と繰り返し述べ、具体的な言及を避けた。
蓮舫代表は最後に、「1億総活躍。どうか、1億でくくらないでもらいたいと願う」と述べ、金子みすずさんの詩「わたしと小鳥とすずと」の中から「みんな違って、みんないい」という一節を紹介。「金子みすずさんの詩のような多様性を認める社会を、私たち民進党は目指す」と誓い、質問を締めくくった。
※本文は民進党HPより転載
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