道路にしか使われないはずの道路特定財源の使途について、次々と新たな驚きの事実が衆議院予算委員会で明らかになっています。
「助け合いの精神での道路整備」をテーマに、03年から05年まで行われたミュージカルに要した費用は5億円。同じ主旨のミュージカルが06年に何回、どこで行われたかを国交省は把握していないどころか、道路財源で行われた広報活動は様々な道路事業に組み込まれていて全体像がわからないことが冬柴国土交通大臣の答弁で明らかになりました。
国道の地下で、全国14カ所に整備された駐車場の利用が低迷し、採算が取れていないことも明らかになりましたが、この駐車場の管理•運営は国土交通省の天下り先の財団法人である駐車場整備推進機構が行っていることも合わせて判明し、冬柴大臣は質問者に問われるままに「(民営化について)私もそう思う
と答えるのが精一杯でした。
これまでに判明しただけでも、国交省職員の人件費に。職員数を上回る宿舎建設と、その家賃補助に。渋滞緩和策という名で地下鉄工事等などに道路特定財源が使われてきました。来年度予算案でも6,000億円は道路以外に使われる予定となっています。
また、10年で59兆円ものガソリン税が必要とする根拠について、国交省は「道路整備の中期計画」によるものと説明してきましたが、この計画作成に使用したデータが最新のものではなかったこと、最新値で推計すると計画数値を下回ることも判明しているほか、建設すべき道路や整備方法について話し合う会議の決定や、国会での判断を仰がずとも国交省の判断で高速道路建設を可能とする抜け道が存在している実態も明らかになってきました。
これは、道路特定財源に限っての弊害だと指摘せざるを得ません。
一般会計よりも国会の関与が薄く、情報公開が遅れている特別会計で扱われる特定財源は、毎年決められた予算が配分され、全てを使い切ることが出来る特徴があることから無駄遣いが生まれやすく効率的ではありません。また、使途限定で弾力的な運用に使えないことも、予算を使い切ってしまうことにつながっています。年度末になるとあちこちの道路が掘り返されては、また埋められる工事を目にした人は多いと思います。予算消化のために、同時に、来年度の予算を確保するために、明らかに無駄な工事が毎年全国で一斉に繰り広げられていることを無駄と呼ばずにはいられません。
50年前に最優先だった道路建設が果たして今も最優先なのでしょうか。まだ、「特別扱い」でいいというのでしょうか、と私たちは今国会で提言しています。
使命を終えた道路特定財源を一般財源にして、国会での開かれた審議を通して予算配分を行い、使途を限定しない一括交付金を地方自治体に分配をすることで、地方はその交付金を自由裁量で使うことが出来るようになります。道路を医療、福祉、少子化対策、教育など多様な住民ニーズと同列に扱い、この中からどの政策を最優先して行うかは、住民の声、地方議会の審議、首長の判断にゆだねられることから、より地域主権が根付くとも考えます。
今日、民主党と全国知事会が主催して「道路特定財源•暫定税率問題に関する公開討論会」が、麻生福岡県知事、東国原宮崎県知事をお招きし開かれました。
特定財源か、一般財源か。中央集権か地方分権か。道路官僚と政治家の癒着構造を改革するにはどのような手段があるのか。こんな大切な審議をわずか2ヶ月間の予算委員会で審議をするのではなく、何故前もって昨年秋くらいから審議をしなかったのかを与党に問いたい、と発言された麻生知事の声が印象的でした。政府与党は暫定税率が継続されなければ国民生活は大混乱と喧伝していますが、本来、暫定税率という臨時措置が08年3月31日で撤廃されることはわかっていました。法律で期限切れとなる臨時の収入が今後も「継続」される、と推測した予算編成を提案してきた政府与党の責任こそ、まずは大きく問われるのではないでしょうか。
麻生知事は、一般財源化されれば予算が削られ必要な道路が作れなくなるから特定財源を維持すべきで、私たちの提案には懸念を表明されていますが、開かれた公平な道路計画を作成する提案には賛同をしてくださいました。
近いうちに宮崎県の道路整備について国交省に問い合わせに行く、と話していた東国原知事。国交省に聞きに行くこと自体、地方にとっての「政治」とは、国会や政党ではなく「官僚」主導であることを表していました。県民だけではなく国民に人気のある知事が官僚を頼らなければならない現実は、「地方は中央の言う事だけを聞いて、その通りに行動すればいい」という、この国のこれまでの中央集権がいかに強固なものであったのかを物語っています。
地方主権のために、そして、限られた財源をより効率的に活用するためにも、道路特定財源の一般財源化から始めることが不可避であると実感しています。