雇用保険

先週、衆議院の厚生労働委員会において与野党の修正協議がまとまり、全会一致で採決された雇用保険法の一部を改正する法律案が、今、参議院の厚労委員会で審議されています。政府提出の法案では雇用保険料を引下げ、「賃上げ」にまわしてほしいとされています。私たちはこの厳しい雇用環境において、今守るべきは賃上げよりも雇用そのものだとして、この修正協議において一年間だけ0.4%の雇用保険料率を引き下げたいとする政府方針についても見直しを求めましたが、残念ながら応じてはいただけませんでした。
雇用保険料を0.4%引き下げると6,400億円の歳入減となります。厚労省は、この規模の歳入減であれば仮に想定以上に失業給付が必要になったとしても現在5兆円もの安定基金があるため、今後5年は対応することができるとしていますが、実は、厚労省のこうした見解とは別に政府は、平成21年度予算案に「予見し難い事態が発生した場合に備え経済緊急予備費」を1兆円計上しています。一方で雇用保険料を引下げ6,400億円の歳入減を行い、5年間は失業給付に対応できるとしながら、他方で1兆円の税金を予備費として失業給付に充てるとする予算編成は矛盾しています。
この雇用保険料引下げは昨年10月30日に、麻生総理が生活対策の目玉として定額給付金と同時に発表したものです。ただし、この発表から5ヶ月が経過した今、雇用環境は政府の見通しをはるかにこえて悪化しています。それだけに今は「賃上げ」のための雇用保険料引下げにこだわるのではなく、現実的な柔軟な対応が望まれると私たちは考え、雇用保険料引下げよりも制度そのものの抜本的な改革を提案しました。
今の雇用保険制度では失業給付がきれてもなお仕事がなく、生活が苦しい場合は生活保護を受けることになります。そこで、失業給付と生活保護の中間に位置する新しい雇用のセーフティネットを構築したいとして『求職者支援法案』を提案しました。また、あわせて労働保険特別会計のお金の使われ方が本当に適切に行われているかの見直しも行いたいと考えています。
今日の予算委員会で、雇用保険の失業給付と助成金事業において不正受給がどれだけあるかを聞きました。直近5年間であわせて116億円の不正受給があり、そのうち、未回収額は27億円、その中ですでに不能欠損金として回収を諦めた額が11億円あることがわかりました。また、助成金事業の委託を受けている独立行政法人・雇用能力開発機構で発生した不正受給が助成金事業の不正受給額の全体の7割を占めていたことも判明しました。(この機構役員には旧労働省からの天下りが4名います。)
もちろん、不正受給は不正を働いて助成金を受け取る側に問題があり、悪質な場合に機構などが刑事告発を行うことは必要ですが、不正受給を防ぐことが出来なかった機構の職員は、これまで1人も処分をされていないことには疑問を覚えています。改めて、助成金事業を天下り団体に毎年委託するのではなく、もっと効率的な運営ができるのかどうかの見直しを行う必要性も感じているところです。
予算委員会での質疑を終え、麻生総理が生活対策として実行したいとする雇用保険料率単年度引下げよりも、制度の見直し、特別会計の在り方の精査を行うことのほうが政治に求められていると感じているところです。

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