蓮舫代表が5日、参院予算委員会の2016年度第2次補正予算の総括質疑に立ち(1)憲法(2)社会保障(3)地方創生――などについて安倍政権の姿勢をただし、是正策を提案した。蓮舫代表は安倍総理に、「政治は今を見るべきだ。今の政治に敏感に、機敏に反応してほしい」と求めた。
憲法については、自民党憲法改正草案の第24条(家族、婚姻等に関する基本原則)に、「家族は、互いに助け合わなければならない」等とあることについて、「明治民法下では、家族の基本は家制度だった。妻と夫は不平等だった。それが現憲法24条で夫婦が同等の権利を有すると規定され、家制度は廃止され、ようやく男女平等が徹底された。そこにあえて(自民党憲法改正草案の24条に)家族を新設するということは、むしろ昔の時代に戻るのではないか」と指摘した。
さらに、「多様な生き方が今本当に進んでいる。重んじるべきは個人の尊重だ。家族の重要性、価値は大切だが、それは道徳的概念であり、あえて憲法の条文に書くことに違和感を覚える。家族は支え合うべきと憲法で規定することによって、国家が担ってきた社会福祉や公的扶助を家族で担えという流れになるのではないかと心配している」と懸念を表明した。
介護報酬の大幅引き下げについて「介護報酬を引き下げれば、事業者の収入が減る。それ以上コストを削減できないから、人への手当てを削減せざるを得なくなり、働く人がいなくなる。施設があっても人がいなければ、サービスを提供できない。そして、サービスを受けていた人たちの居場所がなくなる」と実態を指摘し、「今年1月から8月までの老人福祉介護事業の倒産件数は、過去最高のペースだ。また、特別養護老人ホームには要介護3以上の人しか新規で入所できなくなり、要介護1・2の人たちは家に戻るしかなくなった。行き場所のなくなったお年寄りがいるという現実に向き合ってほしい」「施設より人だ。介護職員の給与があまりにも低い。それを手当てすることによってサービスの充実につなげ、安心して預けられる環境を整えることが先だ。民進党は法案を出し、提案し続けている。さらに議論したい」と表明した。
保育については、「保育所の受け皿整備を増やすということは否定しないが、今の問題はその保育所で働く人が決定的に不足しているということ。施設はあっても子どもを預かれなければ、子どもを産んだ女性は、仕事をあきらめ、家で育児をするしかない。ぜひ人への支援に重点を置いていただきたい」と求めると、安倍総理は「まったくおっしゃる通りだと思う。高い使命感を持って保育の道を選んだ方々の処遇の改善、就業支援に取り組む」と答えた。
配偶者控除の廃止については、「賛成だ。同じ女性でも、働き方によって税制に区別があるというのは撤廃したほうがいい。育児の財源として考える余地もある。ただ、廃止をして夫婦控除にする案が出ていると聞いているが、検討しているのか。なぜ夫婦なのか。税制は結婚に対して中立であるべきだ」と主張した。
地方創生については、2014年度補正予算から来年度の概算要求までで計5770億円もの予算を投じて「効果は生まれているのか」と迫るとともに、「石破前大臣は『バラまきではなく、事後に効果が検証できる目標数値(KPI=重要業績評価指標)を定めることだ』と言っていたがそれに賛成だ。地方創生の事業にはいいものがあると思う」と述べ、(1)事業のスパンが長過ぎる(2)事業の目標が未達成であるにもかかわらず目標を毎年変えながら交付金を受け取っている(3)目標の設定が低すぎる――など疑問の残るケースがあると指摘。「数値目標が重視されていない書類審査が行われ、事業が採択され、交付金を使われてしまったのではないか。限られた財源を大切に使うべきでだ。地域で仕事を作るため、この事業は大切であり、運用を見直すべきだ」と答弁を求めると、安倍総理は「KPIは重要な指数だ。ご指摘の問題点を踏まえて対応していく」と述べた。