2,900円と5,500円。全く同じ業務を行っていても、会社によって時給に大きな開きがあること。業務を行う事務所の賃貸料に、2社の間で1億円もの差が生じていること。2社の時給を同じ額にあわせて、賃貸料を安い社のレベルまで抑えることが出来れば契約総額を安くすることが出来ます。会計法の原則である一般競争入札で契約者を決めれば、税金の無駄遣いを排することが出来るのですが、社会保険庁の発注する業務からはこうした発想を見て取る事ができません。
2月4日の参議院予算委員会において、社会保険庁が発注する電話相談業務契約が果たして適正なのかどうかの問題提起をさせていただきました。
舛添厚生労働大臣、福田総理からは「早急に検討する」、「チェックを行う」との答弁をいただいたのですが、実は、補正予算が成立した翌日、社会保険庁は民間企業5社と新たに640席分の電話相談業務契約を交わしています。契約形態は『随意契約』。契約単価を見ると、これまで時給5,500円とされていた管理者の時給が5社とも全て2,900円から2,950円で見事に揃っています。つまり、予算委員会で時給単価の違いを指摘されたことから、その単価をそろえることで更なる批判をかわそうとしたのではないでしょうか。とはいえ、これまでの契約よりも時給単価を引き下げたことで人件費総額が圧縮され、補正予算で予定していた契約総額を約5億円引き下げることが出来ています。予算委員会でこの問題を指摘していなければ、社会保険庁は5億円も節減できる努力を行ってこなかったことを考えると、今回の対応は一応評価することができますが、問題は「随意契約」で契約が行われたことが適切かどうかです。会計法の原則は「一般競争入札」ですが、例外として「随意契約」を交わすことが出来ると規定されています。ただし、例外とは「少額」、「独自性」、「緊急性」のある場合であって、今回の社保庁の契約がこの例外に当てはまるとは思えません。随意契約で時給単価をそろえるのではなく、仕事の質が保障され、さらに時給単価を下げることができるかどうかを提示してもらえる「一般競争入札」を行っていれば、今回の契約総額が更に引き下げられる可能性も否定できません。
社会保険庁のこうした「お金の使い方」の感覚は到底理解することが出来ません。また、5,000万件の宙に浮いた年金記録問題解決に向けた動きも、実に様々な問題があることもわかっています。それでも、社会保険庁は2年後に「日本年金機構」として民営化されることになっています。安倍総理の時に、民営化法案が与党の数の力で強行採決されたからです。民営化とはいえ人件費等に税金が使われるのですが、問題は、2年後から「日本年金機構」に対する国会の関与が極めて限られてしまうことです。情報公開、保険料の使われ方、天下り、経営状況について私たちが資料の請求をしたり、説明を要請しても「多忙」を理由に拒絶される可能性が極めて高くなります。その意味からも私たちは、社会保険庁を民営化するのではなく、国税庁と機能をあわせ「歳入庁」を創設したいとする法案を何度も提出してきています。残念ながら衆議院では与党が多数を占めていることから、この法案は審議すらされていません。
1日も早く総選挙が行われ、民意によって衆参のねじれを解消したいと思っています。