社会保険庁は無駄遣いを削減し、年金記録問題への経費に充てるための合理化努力を行ったと主張しています。
その中身は『宿舎や事務所の工事を凍結』、『研修等を中止』、『施設売却』となっていますが、工事の「凍結」は「先送り」であり、いつかはお金を使うという計画はそのまま残るため、無駄遣い削減ではないと思えます。また、中止される研修項目は『法令遵守、公務員倫理、個人情報保護』です。芸能人や国会議員の年金記録を勝手にコンピューターから見て処分された職員がいます。年金保険料を横領までした職員がいました。記録入力をいい加減に行ったりしてきたのが社保庁職員です。その監督者にこそ最も求められる法令遵守や公務員倫理の研修を不必要として中止するという判断は理解できません。
さらに驚いたのは『年金給付・年金相談事務研修』が中止になっていることです。この研修は、年金相談の現状と課題、時宜を得た年金給付や相談に関する事務、時宜とは時がちょうど良いこと、つまり、5,000万件の記録に関する年金相談事務の研修を中止にすると、社保庁は判断をしているのです。今日、この点を社保庁長官に問うと「膨大な事務作業が発生しているため、研修を一部中止」と答弁しましたが、膨大な事務作業とは自らの組織が発生させた年金記録問題の処理作業であって、そのために必要な研修を取りやめる明快な理由は聞けませんでした。
また、現在参議院の予算委員会で審議をされている政府提出の平成19年度補正予算案には、年金記録問題の解決に201億円が計上されています。
一日も早く問題を解決するために、税金を投入せざるを得ない点は否定をしませんが、まずは問題を発生させた社会保険庁や政府が努力をして、無駄遣いをやめて必要経費を捻出し、その上でさらに必要になる経費を国民に情報公開と、丁寧な説明をした上で国庫負担をお願いすることが求められると思います。
ところが、この計上された予算案で行うとしている年金電話相談業務では、すでに落札をした2社が作業を開始しています。その契約内容を調べると、全く同じ業務を行っているにもかかわらず時給が最大で「2,600円」違うことがわかりました。
この契約は総合評価落札方式で行われ、本来は品質や作業技術、能力といった点を総合的に評価して事業を発注するのですが、今回は2社に全く同じ業務を発注したところ、設備使用料が高い1社では働く方の時給が低くなり、使用料が低いもう1社では働く方の時給が高くなるという格差が出る契約になっていました。時給単価の低い方へ人件費を統一すればそれだけ発注総額は引き下げられます。賃貸料がより低い場所で作業を行うことにすれば、その分、やはり発注額を引き下げることが出来ます。
社保庁のミスを正すために国民に新たな負担を求める内容の予算案だけに、総額を下げられるのであれば一般競争入札を積極的に導入してほしいと指摘をしたところ、社保庁長官から納得のいく答弁はいただけませんでした。
今日、参議院予算委員会で平成19年度補正予算案の中から、特に年金問題に関する点について福田総理、舛添大臣、坂野社会保険庁長官に質問をしたところですが、社会保険庁のお金の感覚、仕事の仕方ではまだまだ削減できる無駄遣いがあることがわかりました。
さらに、国会で開かれた審議を行い、この予算案が本当に必要かどうかという議論が大切であると思いますが、今日の委員会の中で福田総理は
「早く予算を通してくださいよ」
という発言をされました。予算案には「衆議院の優越」が適用され、参議院の審議結果よりも衆議院の決定が優先議決されます。ただし、それは「参議院での審議が不必要」という規定ではありません。総理が、国会審議を軽視しているとお考えであれば、それは大きな問題です。