国会が閉じてから、厚生労働省と社会保険庁から年金記録問題のサンプル調査の結果や、政府の有識者会議による社保庁解体についての報告書が相次いで発表されています。国会開会中であれば、新たに判明した様々な問題を、公開された委員会の場で大臣に質疑が出来ますが、閉会中はできません。この時期に発表されたことに政府の意図があるのかどうかわかりませんが、党としてもこの年金記録問題の調査を続けるために、週に最低でも一度は厚生労働部門会議を開いています。
今日は、社保庁と総務省から5,000万件の宙に浮いている年金記録問題の統合状況と、新たに発表された厚生年金記録についてのサンプル調査の結果について説明をしてもらいました。
昨年7月5日に政府・与党が発表した5,000万件の記録の取りまとめ方針では、今年の3月までには社保庁のコンピューターの記録と宙に浮いた記録を突き合せ、記録の持ち主のわかった方に案内を届け、記録訂正を行っていくとされていました。また、当時の安倍総理は「最後の1人までしっかりとお支払いをする」と何度も参議院選挙の街頭演説などで話されていましたが、方針発表から1年が経過した今、基礎年金番号に結びつけられた宙に浮いていた記録は619万件で、全体の1割強に過ぎないことが明らかになりました。私たちは公約違反であると考えています。
私たちは問題が判明した当初から、問題の解決策として、まず宙に浮いた記録の持ち主と思われる方には、その記録情報を工夫してお知らせをして本人に確認をいただくことと、領収書などを本人が保存していない場合には、聞き取り調査を行い、記録の持ち主と思われる場合には迅速に認めていく方針を提言していましたが、政府は私たちの提案に全く耳を貸しませんでした。ところが、5,000万件の記録訂正が遅々として進まないことが明らかになった今年春以降は、「ねんきん特別便」の記載をもっとわかりやすく書くこと、記録そのものを提示していくこと、紙台帳とのサンプル調査を行い今後の対応を考えることなどなど、私たちが指摘していた解決策を次々と行ってきています。すでに、記録訂正作業では500億円もの税金が投入されています。私たちの提案を早期に取り入れてくれれば経費は削減できたとも考えられますので、非常に残念ですし、社保庁には猛省をしてもらいたいと思います。
さらに、政府・与党は宙に浮いた5,000万件以外の年金記録には問題がないと強く主張をし、私たちの指摘する5,000万件以外の記録にも問題があるのでサンプル調査を行ってほしいとの要求にも長く耳を貸してきませんでしたが、ようやく政府は、厚生年金記録がオンライン上に正しく入力されているか確認をする2万件のサンプル調査結果を発表しました。その結果、驚いたことに名簿とオンライン記録が一致しなかった割合は1.4%で、4億件の厚生年金記録で推計をすると『560万件』が原簿とコンピューターの記録が一致していないことが判明したのです。
つまり、「持ち主のわかっている記録は問題がない」としていたこれまでの政府の主張が間違っていたことが明らかになったと同時に、560万件もの記録の持ち主が、間違った年金額を受給していたり、実際とは違う記録が記載されていて年金受給時に正しい額をもらうことができない人が多数存在する可能性が高くなったのです。560万件のうち、実に344万件は給料額情報が間違っていることも明らかになりました。
今日の社保庁の説明では、「年金記録の修正方法を検討するためにサンプル調査を実施した」ので、何故紙台帳とコンピューターの記録が違っているのかを解明し、原因を調査する方針ではないとのことでした。さらには、問題解決のために、不一致の記録を効率的に検索可能とするためのコンピューターシステムを新たに開発、整備して、間違った情報が記載され年金受給額に間違いがある方には、「本人からの申し出」があった時点で対応していくと言います。
大きな問題は2点。
5,000万件の宙に浮いた記録は9割弱が未だに宙に浮いたままだということ。
5,000万件以外にも厚生年金情報に少なくとも560万件の間違いがあることが判明したものの、本人から申し出をしないと情報訂正はされないということ。
2010年に社保庁は日本年金機構として民営化されます。国会の関与は今よりも薄まり、情報が正しく管理されているのか、今発覚している問題がきちんと解決されているのかを国会議員が知り得る可能性が低くなる事が大きく懸念されます。
私たちは社会保障を司る機関は公が責任を以て担当すべきだとして、年金を税と同じように徴収・給付する「歳入庁」の創設を提案しています。
やはり、一日も早い総選挙が行われ「社会保障と税のあり方」が争点となり、今のままの制度でいいのか、民主党の提案がいいのかを国民に判断いただきたいと強く思っているところです。