周産期医療

2007年、搬送された妊婦の受け入れを断ったことがあるという総合周産期母子医療センターが全体の7割にのぼることが、厚生労働省の調査で明らかになりました。
総合周産期母子医療センターは、異常分娩等で危険な容態の妊婦や新生児の緊急治療を扱う病院で、母体と新生児の集中治療室を備え、複数の医師が24時間対応できる体制が望ましいなどと国の整備指針で定められ、重症度の高い患者である妊婦を受け入れてくれる重要な役割を担っています。そのセンターの7割が救急車で搬送された妊婦を受け入れることができなかったといいます。厚労省のアンケートによれば、最大の理由は「新生児集中治療室(NICU)に空きがなかった」ことで、次いで「母体・胎児集中治療室(MFICU)が満床だった」ことが挙げられています。
先月、東京都内で8カ所の病院をたらい回しにされ、最終的に治療を受けることができたものの、赤ちゃんを出産した3日後に母親が亡くなるという事件が発生しました。その直後に、私たちは周産期医療再建ワーキングチームを立ち上げ、周産期医療の体制を整備するための対策をまとめる作業を始めています。
昨日、北里大学医学部の海野信也産婦人科教授と国立循環器病センターの池田智明周産期診療部長から今の周産期医療の状況及び課題について話を伺いました。
搬送される妊婦を受け入れるためには、新生児集中治療室と母体・胎児集中治療室の満床状態を改善し、ベッドを空けることが必要となりますが、長期入院児の多い小児科病棟にも空きのベッドがなく、依然治療が必要で退院できない重症児の受け入れ先もなく、重症心身障害児施設にも空きがないなど、場所がないために、新生児集中治療室の満床状態が改善されないという現実。専門医が、自身の勤務する国立病院の治療室に空きがなく妊婦を受け入れられないが、受け入れてくれる病院が見つかった場合、妊婦と一緒にその病院に行き治療を助けて担当することがあるが、公務員の兼業禁止規定があるために、有給休暇を利用しボランティアで治療を行っているという現実があること。また、仮に集中治療室を増設しても産婦人科医、麻酔医が足りないために新たに妊婦の搬送を受け入れられないこと。救急車と病院の情報をつなぐシステムをどんなに改善しても情報を実際に入力する人手が絶対的に不足していることなど、現場からの厳しい現状についてのお話を伺いました。
「日本の周産期医療は妊産婦死亡率、新生児死亡率という指標からみると確実に進歩し、改善してきていて、先進国の水準を確保していることを十分に理解した上で、周産期医療の問題点や改善策を考えるべき」
「妊産婦死亡率はまだまだ下げられるという思いで、我々は取り組んでいる」
海野先生が言われた言葉がとても印象に残っています。現場の医師が自分の時間を削って、命を助けるために行われている想像を越えた努力が見える思いでした。その意味では、総理の極めて不適切な失言が、現場でご苦労をされている医師のやる気を削がないかどうかが心配されます。
医師の皆様の努力で保たれている医療の質をどうやって高めていくことができるのか、政治が本気で取り組むべき喫緊の課題だと思っています。党のWTでは更に、現場の声を聞きながら、周産期医療再建に向けた政策提言をまとめていく予定です。

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