総理大臣が国会で行う所信表明演説は、総理の国政についての方針や重点課題をあげて説明するもので、後日、この総理の所信に対して各党各会派から代表質問が行われることになっています。
今日、参議院で行われた麻生新総理の所信表明演説には正直言って、とまどいを覚えるほど驚きました。
その方針の善し悪しはともかくとして、小泉元総理は郵政民営化を。安倍元総理は教育改革を。福田前総理は消費者庁の創設を。私が聞いてきた歴代総理の所信ではそれぞれ、総理のやりたいことに力点が置かれた演説がありました。ところが、麻生総理の演説は、自身の演説の要所要所で民主党を批判することで、自民党と公明党との連立政権が責任と実行力のある政治を行うと主張し、さらに、いくつかの質問を民主党へ投げかけ、最後に野党の考えを聞きたいとして演説をしめました。
当然ですが、野党は、国会で答弁する立場にはありません。麻生総理の投げかけは一体何のためなのかが全く理解できませんでした。
例えば、麻生総理は「民主党に要請します」として、「補正予算の成立は焦眉の急であるとして、飲めない点があれば代表質問で示すか、独自案を出すなら財源を明示していただきます」と言われました。ところが、総理の所信表明演説には、その補正予算案の具体的な説明や思い入れもないどころか、財源には1円たりとも触れられていません。およそ2兆円の補正予算案の財源と、定額減税が一体総額いくらになるかの規模とその財源を示すことなく、野党に財源を示すよう質問することが新総理の所信表明演説の一部なのです。
1年に二度も現職の総理が職責を投げ出しました。国民に問うことなく、自民党内から3人目の総理が誕生しましたが、その所信表明には国民への言葉より、民主党への批判が目立ったことに戸惑いを覚えています。