台湾から学ぶこと

台湾の国会にあたる立法院総選挙の結果、野党国民党が圧勝し、与党民進党が惨敗をしました。

今回から導入された小選挙区制度そのものが、台湾全土で強固な組織力を誇る国民党に有利だったことや、議席数が一気に半減されたことなど民進党が惨敗した理由は様々考えられますが、2000年から始まった陳水扁政権下の8年間で停滞を続ける経済情勢や、民進党が主張をする台湾の独立よりも現状維持を望む声が主な民意として定着してきたことが総選挙に大きな影響を与えたように思えます。つまり、「政治的将来の選択」より「株価に代表される不況回復」が、今の台湾の人々が望む政治への総意だったように思えます。

国民党の獲得議席は81。民進党のそれは27議席。議会の3分の2以上の議席を獲得した国民党は総統罷免権を提案し住民投票にかけることができる他、無所属諸派の5人とあわせ4分の3以上の議席数となったことで憲法改正をも提案できることとなりました。

一般的に考えると、議会における圧倒的第一党である国民党の総統候補が3月に行われる総統選挙で有利に見えるかもしれませんが、国民党の馬候補が勝利をするのか、民進党の謝候補が逆転的勝利をするのか、まだまだわかりません。私がメディアで00年と04年、台湾の総統選挙を取材して強く思うことは、台湾の方々の政治に対する優れたバランス感覚です。例えば、3人の候補者が闘っているなかで、そのうちの一人が泡沫候補となると、その候補に入れる予定だった有権者は自らの票を「死に票」にしないために、上位2人の候補者に支援を鞍替えする傾向が強くあります。それは、『自身の1票が政治を変えることが出来る』と知っているからこその投票行動です。

馬候補の勝利で国民党が政権交代を果たすのか、それとも、難しい議会運営を強いられはするものの民進党が引き続き総統の重責を担っていくのかは、台湾の方々が3月に選ばれることですが、台湾から学びたいと思うのは、政治の主役は「人民」だということと、主役である人民の選択で二大政党制が熟成されつつあるという台湾の現実です。

政権交代は一度で終わるものではありません。
与党という座に甘んじ民意に鈍感になった政党は、国民の判断で下野するべきであるし、国民のために汗をかいている議員の集団であると判断された政党は与党になるべきだと思えます。そして、国民の選択で政権交代をいつでも可能とすることが政治に緊張感をもたらすことになると、私は信じています。

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